笑わない人が羨ましい

 

小さい頃からずっと愛想笑いをしてきた。

 

私は人と喋るのが苦手だ。

自分から話しかけるのはまず不可能。

話しかけられたとしても、うまく言葉を返せない。相手の言葉を理解して、それに対して自分の意見を持ち、適切な言葉に変換して返さなければならない、その一連の流れ自体に時間がかかってしまう。

別の要因として、特に小学生の頃は、相手の言葉を聞き取れないことが多かった。(聴覚情報処理障害という病名もあるらしいが、診断は受けていない。)

最初は何回も聞き返していたけれど、それでも聞き取れないことが多く、相手に申し訳なくなってやめた。

 

それから私は愛想笑いをするようになった。聞き取れなかったときや間が持たないときは笑えばいい。

でも今度は周りから「笑い上戸」「笑いすぎ」と言われることが多くなった。それに笑いどころを間違えると、愛想笑いでも不快に思われることがしばしばある。

それでも社会に出てからは、そんな風にはっきり指摘されることもなくなったし、むしろ上司や先輩に対して多少お世辞を言ったほうが可愛がられることもあって、やっと周りに溶け込めてきたのか?と思うようになったところだった。

 

最近、笑わない人にイライラしてしまう自分に気づいた。

仕事には黙々と取り組むので優秀、でも周りとあまり馴染まず、話しかけても一言二言で話が終わってしまう、そういう人を見ると、私の心の底がざわつく。

私は話が続くように頑張っているのに、よく思われたくて笑顔を振り撒いているのに、なんであなたはそのままなの?笑わない人たちが職場で受け入れられていることが私は羨ましかった。羨ましい、場の雰囲気にアンテナを張り巡らせなくても周りに受け入れられることが。

私もそうなりたかった。そうなりたい。

 

怒りの元が妬みだと気づいたとき、自分の理不尽さに恥ずかしくなった。でも同時に、少しスッキリした。

私は本当に人と話すのが好きではないのだ、そう思った。そもそも私がアンテナを張り巡らせたところで、たかが知れているのだし、それなら好きなように振舞った方がいいではないか。

そう思えたとき、少しだけ自分を解放できたような気がした。

 

私は毎日同じ人に会うと気疲れでへろへろになってしまうので、今のところ一般的な就職はできないと思っている。まだまだ気を遣って心をすり減らす日々が続いているけれど、少しずつ変わっていけたらいい。